HOME薬剤師会の活動>セルフメディケーション

検体測定室とセルフメディケーション支援薬局

検体測定室について

Q あまり聞き慣れない言葉ですが、検体測定室とは何ですか?

A 検体検査室とは、ちょっと言葉が難しいかもしれませんが法律上は、 以下の全てを満たした、診療の用に供しない検体検査を行う施設を言います。

  1. 当該施設内で検体の採取及び測定を行う。
  2. 検体の採取及び採取前後の消毒、処置については受検者が行う。

と定義されています。 つまり、医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師が運営責任者となり、 その指示、管理の下、検査を受ける方が自分で血液を採取し、その血液を検体として検査を行う場所と言う事になります。

 


従来、血液検査と言うと病院や診療所または衛生検査所でしか受ける事が出来ませんでした。 しかし、昨年4月に法律が改正されて一定の条件を満たして国に届け出をし、許可を受ければ薬局などでも検査を実施する事が可能になったのです。

Q 検体測定室とは、一種の規制緩和がおこなわれたのですね?

A そうです。この流れをお作りになられたのが筑波大学大学院内分泌代謝・糖尿病内科の准教授であられます矢作直也先生です。矢作先生は2010年から「糖尿病アクセス革命」と言うプロジェクトを実施されました。これは東京都足立区と徳島県にある20軒の薬局に、血糖の指標であるHbA1cを測定する検査機器を設置して、薬局において検査を実施し、糖尿病の予備群をスクリーニングしようと言うものです。


2010年10月から2014年3月までの3年6ヶ月の間に、3014人の方が検査を受けられたそうです。そのうちbA1cが6.5%以上で糖尿病が強く疑われる人が約12%、同6,0〜6,4%の糖尿病予備群が疑われる人が約16%もいたそうです。合わせると3割近い数字です。しかも検査を受けた方の44%が定期的な健康診断を受けていなかった事も分かったそうです。こういった実証データに基づき、薬局などでのスクリーニング検査の有用性が国に認められた訳です。

Q この制度には実証データの裏付けがあるのですね!それでは実際に検査はどのようにすればよいのでしょうか?

A はい、それでは私の薬局(セキネ薬局)での実施状況を一例にしてご紹介させて頂きます。
まずこの検査を受けて頂くためにはいくつかの確認事項がございます。例えば現に糖尿病と診断され医療機関で治療や指導を受けている方は対象外です。また血液が固まりにくくなる抗血栓薬を飲まれている方、または血液が固まりにくくなる血友病などの病気をお持ちの方も対象外となります。このような確認事項などの説明に十分にご理解頂いた上で、検査申し込み書に記入して頂きます。その後実際の検査に移ります。
当薬局では血糖の指標であるHbA1cと脂質の指標であるコレステロールや中性脂肪を測れる機器を導入していますので、どの検査をお受けになるか確認いたします。 それに合わせて、使用する器具を用意します。

検査をする為の血液は手の指先から採取しますので、検査を受けるご本人に、アルコール綿などを用いて指先の消毒を行って頂きます。
次にディスポーザブルタイプの穿刺器具を用いて、指先から血液を出して頂きます。
出てきた血液を検査用のディスクに吸引させれば測定の準備は終了です。
ここまでは受検者ご本人に実施して頂きます。
その後は検査用ディスクを運営責任者(私)が受け取り、その場で検査機器にセットして測定開始です。
検査結果はHbA1cの検査で約5分、脂質検査で約6分で出ます。

Q 血液はどのくらい取るのですか?穿刺器具の操作はむつかしくないですか?

A 血液の量はHbA1cの検査で「米粒」くらい、脂質検査で「小豆」くらいの大きさで十分です。
また穿刺器具も一回使いっきりのディスポタイプを用いますし、それを指先に押し当ててボタンをパチッと押すだけなので、操作自体は難しくありません。

 

Q 測定がおわり、検査結果が出た後はどのようにすればよいでしょうか?

A 測定後は、こちらから検査結果の測定値と測定項目の基準値などの目安の値が記載されている、検査結果通知書と言うものを発行させて頂きます。

もし検査結果が高かった場合は、病院や診療所などできちんとした検査と診断が必要ですので、一度お医者さんにおかかりになる事をお勧めしております。

 

生活習慣病について

検体検査室の検査に関わる糖尿病や脂質異常症は、生活習慣病です。

糖尿病、高脂血症、高血圧症と肥満の四つがそろってしまう事を、「デッドリーカルテット」または「死の四重奏」と言っております。 この四つが揃うと致死性の病にかかる確率がかなり高くなる事からそう言われているのです。
これらの病気の怖い所は、初期には自覚症状が殆ど無いと言う所です。「痛い」や「かゆい」などの自覚症状がある病気なら、比較的早期に病気に気がついて、お医者さんを受診される方が多いでしょう。 しかし、糖尿病や高脂血症、高血圧症にはそういった自覚症状はほとんどありません。そのため病気が見落とされがちになり、必要な治療を受けるタイミングが遅れがちになるのです。 しかし、これらの症状が進んでいくとさまざまな合併症を引き起こします。

高脂血症

高脂血症は、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪などが高い状態です。「血液ドロドロ状態」なんて言葉をメディアで耳にされた事のある方もいらっしゃるかと思います。 この状態が長く続くと、余分な油分が血管の壁にくっついてしまいます。 それによって血管の壁が厚くなり、本来持っている柔軟性や弾力性が失われます。 この状態がいわゆる動脈硬化です。動脈硬化を起こしてしまった血管は血の流れが悪くなったり、悪化すると血管が詰まってしまいます。心臓に栄養を送る血管がつまることで起こるのが、皆さんも良く耳にする心筋梗塞です。また脳に栄養を送る血管がつまる事で起こるのが、脳梗塞などです。 こういった死に繋がる病は、脂質異常からくる動脈硬化が主な原因の一つと言われております。

糖尿病の合併症、糖尿病性網膜症

糖尿病もさまざまな合併症を引き起こします。一つ目が糖尿病性網膜症です。
目の中に網膜と言う所があります。網膜はカメラにたとえるとフィルムの役割を果たす部分です。ここが高血糖状態によって障害を受け、血管がもろくなり出血を起こします。しかしこの出血は初期は小さいため自覚症状がほとんどないそうです。しかし病気に気付かずにそのままにしてしまうとやがて大きな出血を起こしてしまい、場合によっては失明に繋がる事もあるそうです。

糖尿病の合併症、糖尿病性腎症

二つ目が糖尿病性腎症です。これは腎臓の中で中心的な働きをする糸球体と言う所が障害されます。腎臓は血液中の老廃物や不要物を尿中に排泄し、かつ体に必要なものは漏らさないようにして血液の適正な環境を保っています。しかしこの機能が障害を受けると、本来排泄するべき老廃物が体の中に溜まってしまいます。この状態を尿毒症と言います。尿毒症になると溜まってしまった老廃物を除去するために、人工透析を受けなければならなくなってしまいます。現在では人工透析を受けなければならなくなる原因の第一位が糖尿病なのです。

糖尿病の合併症、糖尿病性神経障害

三つ目が糖尿病性神経障害です。これは高血糖状態が続く事により神経、特に手や足などの末梢神経が障害を受ける病気です。最も典型的な初期症状は両足の裏のしびれです。やがて、しびれはだんだん上の方へと広がり始め、両手指も先端からしびれ始めます。ひどくなると殆ど痛みを感じなくなり、足にけがをしていても気がつかなかったりする恐れがあります。たかがしびれと言っても軽視は出来ません。足が腐って切断しなければならなくなる糖尿病性壊疽の多くは、神経障害で知覚麻痺をきたした足に小さな傷が出来ることから始まります。 傷の原因は靴擦れや深爪などごく些細なものが殆どですが、足がしびれて痛みを感じないと手当が遅れます。そして血行障害や免疫力の低下によって治癒力が弱っているすきに、 細菌が入り込んで感染が広がります。ふつうならば痛くてたまらないはずですが、しびれのせいで痛みを感じないため、 診察を受けるのが遅れがちになります。 足全体が腐ってしまってから、やっと不安を感じて病院を訪れたが時既に遅し、という悲劇は稀ではないそうです。

Q 目が見えなくなったり、透析になったり、足を切断しなければならなくなったりなんて、糖尿病は本当に怖い病気なのですね。

A そうなのです。でもそれは重症化してしまった場合のお話です。早期に発見して、適切な治療をお受けになればその様な事態は回避出来ます。ですから日頃からご自分の体の状態を把握していく事が大切になるのです。


セルフメディケーション支援薬局

検体測定室のある薬局の役割

血圧に関しては家庭用の血圧計が比較的安価で入手出来る様になりましたし、公共施設などにも血圧計が設置されている事もありますので、測定出来る機会はあるかと思います。しかし、血糖値や脂質検査は今まではなかなか検査する事が出来ませんでした。本来は、特定健康診査などの検診をきちんと受けられれば一番良いのですが、仕事が忙しい、時間が取れないなどさまざまな理由でなかなか検査を受けられないでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな方にこそ、今回の制度、検体測定室を利用していただきたいのです。

Q 検査を実施している薬局はどうすれば分かりますか?

A 検査を実施している薬局は、日立市薬剤師会のホームページ、または茨城県薬剤師会のホームページに掲載されております。各HPで「セルフメディケーション支援薬局」と言う項目を探してみて下さい。
また、実施している薬局さんによっては、「セルフメディケーション支援薬局」のイラスト入りのステッカーを貼っていたり、「糖尿病検査実施中」と書かれた大きなのぼりを掲示している薬局さんもございます。これらを目印にされても良いかと思います。

 

 

実際に検査を受けられた方のお話をご紹介させて下さい。

ある方はHPを見てお電話を頂きました。その後実際にご来店頂きHbA1cの検査をお受けになりました。
この方は、以前受けた健康診断でHbA1cの値が6.0で若干高いけど、すぐに治療が必要な程ではないから、食事や運動に気をつけて下さいとの指導を受けたそうです。
その後、ご自身では気をつけているつもりだったのですが、忙しくてなかなか次に健康診断を受ける時間が取れずずっと気になっていたそうです。
今回の検査の結果は、HbA1cが5.8で以前に比べて改善しておりました。
いままでご自分で気をつけていた事の効果が数値としてはっきり分かり、これからも継続していきますと嬉しそうに帰宅されました。
また別の方は、店頭に掲示してあったのぼりを見たと言って来店されました。
お話をお伺いすると、最近おしっこをした時、何か泡立つ様になり、気になっていたとの事でした。
テレビの番組で、おしっこの時に泡立つのは糖尿病の疑いがあると紹介されていたのを覚えていて、 ご自身もそうなのではないかと心配していたそうです。
そこで検査についてご説明した所、すぐに検査をしたいと希望されましたのでその場で検査を実施いたしました。
この方もHbA1cを測定したのですが、結果は5.4でまったく問題ありませんでした。 ご自身が糖尿病では無い事が分かり、とても安心したご様子でした。
この様に、検体測定室を利用すれば、ご自身の空いている時間に町の薬局などで気軽に検査を受ける事が出来ます。
検査を受ける事でご自身の状態が分かり、生活習慣の改善にも繋げられます。 また病気の早期発見にも繋がりますので、病気の重症化を防ぐ事も出来ます。

セルフメディケーションの重要性と薬局の利用

定期的に検査を受けてご自身の状態を把握する事、その結果もし治療が必要な状態であれば、 きちんと医療機関を受診して適切な診断、治療を受ける事が病気を重症化させないために大切なのだと思います。今回の制度はそういった適切な診断、治療を受けるための橋渡し的な役割も担っているのです。
最近はテレビや雑誌、インターネットなどの報道でさまざまな健康に関する情報が取り上げられ、皆様も感心が高い事と思います。
さまざまな情報が手軽に手に入る事は便利な事だし、良い事だとは思います。 しかしその一方で、その情報にいたずらに踊らされてしまうと言う事もあるのではないでしょうか?
どの情報が正しくて、どの情報が根拠の乏しいものなのかを見極めるのはとても難しい事だと思います。だからこそ、きちんとした専門知識を持った医療従事者への相談が大事になるのだと思います。
もしご自身の健康について、何か不安に感じる事がございましたら、かかりつけのお医者さんや我々薬局の薬剤師に是非ご相談ください。
「セルフメディケーション支援薬局」では、検体測定室での血液検査以外にも、一般用医薬品や健康食品にまつわる相談やこころの健康にまつわる相談、禁煙支援、 食事や運動など生活習慣にまつわる相談などもお受けしております。
また、手元に残ってしまったお薬、いわゆる残薬の管理についてのお手伝いなども実施しております。
何か気になること、分からない事などございましたら、どうぞ我々町の薬局の薬剤師にお気軽にご相談ください。
そして今回の制度を皆様の健康維持のために積極的にご活用ください。

 

セキネ薬局

関根 剛

 

日立市内のセルフメディケーション支援薬局はここをクリック

セルフメディケーションについて詳しくはここをクリック