第153回県北薬剤師勉強会

「『COPD患者の未来は吸入指導で決まる!』~COPD治療の主役は薬剤師」

このタイトルなので襟を正して話を聞かねばなりません。

講師は筑波大学附属病院、ひたちなか総合病院の寺本信嗣先生でした。呼吸器内科の先生で、COPDの認知度を上げるための啓蒙活動をされており、一般書、専門書等を上梓して活躍されております。

肺と呼吸に不安があるときに読む本 (早わかり健康ガイド

COPDの病診連携と在宅管理 (Monthly Book Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション))

まず、COPD(慢性閉塞性肺疾患) は年々増え続けており、しかも2020年には日本の死亡原因ランキングの第3位になる勢いだそうです。また、現在治療されている患者は50万人ほどです が、推定患者数は700万人だそうです。未治療になってしまう理由は、症状が重症化しないと受診行動にうつらないこと(病気の認知度がひくすぎる)と、他 に慢性疾患がある場合、例えば循環器科で治療を受けている場合に発見が遅れることがあるそうです。そしてアメリカとの比較では禁煙運動に数十年の遅れがあ るので、煙草の消費量が完全に下降を初めていないそうです。COPD患者数は日本では今後30年増え続けて、欧米の患者数が下降する時代も、日本では深刻 な問題が続くらしいです。アジアでは中国からの大気汚染の影響も大きいそうです。

そこで、COPDの治療をどうにかしなくてはならないので すが、先生は長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を上手に使って生活の質を改善する、悪くしないことだとおっしゃいました。(薬物療法とはべつに治療の当 初は1に禁煙、2に禁煙、3、4も禁煙とのことでした、吸入薬治療の実践としてはLAMAと)

COPDは、息は吸えるが、吐けない病気で す。放置すると「眠れない」「お風呂がつらい」「食事がまずい」「トイレがつらい」ことがあらわれるそうです。このような症状をなくすことが治療の目標と もおっしゃっていました。息切れも含めて、COPDを自覚することは難しく(加齢や他の病気を考えてしまうこともあるそうです)、治療が遅れがちになりま す。今は優れた治療薬があるのできちんと吸入できれば症状を改善することができます。でもそうは問屋がおろさないとのことです。

吸入薬は作 用する気道の細胞まで運ばれないと意味がありません。そしてCOPDは気管支喘息よりも気道の病変が末梢に起こる傾向があるそうです。そのため吸入をきち んとしたとしてもすべての患部に薬が届くことはあり得ないような状態のなかで、効果を上げるためには、やはり薬剤師の魂を込めた!仕事が必要とのことで す。

信じられない吸入薬の誤用の例をお話しされました。「胸に近い所につけたほうが良いと思ってと、エアロゾルを胸に直接噴霧」「吸入用ブリスターのカプセルを内服」など本当にあった話だそうです。

吸入デバイスや、ドライパウダー製剤とエアロゾル製剤の違いがありますが、ようはきちんと効果をあげるために薬が気道病変部へ届くことが大切です。(スピリーバについてはハンディヘラーとレスピマットがありますが、先生は断然レスピマット1択とのことです)

坑コリン製剤としての禁忌についても話されていました。吸入製剤は局所作用なので、通常問題ない。全身作用があったとしても製剤の用量が少ないものばかりなので心配しすぎないほうがよいとのことです。疑義照会の電話がかかってくると困ってしまうのでしょうね(⌒-⌒; )。新薬の「エクリラ」は作用時間が短いので尿閉をもしも起こしてしまう患者にも使いやすいのではとのことでした。

COPD患者への薬剤師の役割は大きいと思いました。在宅医療との関わりも合わせると、想定しているよりもできることは多いのかもしれません。

そ して、薬剤の進歩によるあらたな問題もお話しされました。LAMA、LABA、とステロイド、また配合剤の登場により、重複投与が起こりやすくなっている そうです。COPDは生活習慣病の一つとして内科治療が行われる現状と未来がありますから、専門医でなくても当然診療を行います。吸入剤の併用は当然ある わけで、薬剤師は重複投与を防がなければなりません。

話のまとめでは、COPDは治せば高齢者は元気になります。吸入薬を本物の治療薬に変えられるのは「優秀で親切な薬剤師の先生」です。COPD治療に魂をいれましょう!(しっかりやってくれ)とのことでした。

数年前にフランスの凱旋門賞という世界一の競馬競技会で、ディープインパクトがドーピング(禁止薬物使用により)で失格になったことについて、雑談で解説されていたことが、個人的に参考になりました。馬はCOPDになるそうです(O_O)