日立薬剤師会院外処方せん応需薬局学術講演会

「日立薬剤師会院外処方せん応需薬局学術講演会」という今まで日立薬剤師会の学術委員会がおこなってきた勉強会とは一味違うような、リニューアルされたような勉強会でした。学術委員会の委員長が変わりましたので、新委員長の意気込みが感じられる勉強会でした!今後も期待したいです。

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特別講演は「メトホルミンの適応症例と安全性~他の糖尿病薬との併用も含めて~」でした。小沢眼科内科病院の副院長 水谷正一先生の講演です。小沢眼科内科病院は常勤医が15名いる大病院です。メトホルミンについて復習にもなり、新しい知識も得られる、糖尿病の臨床例も含めた得難い知見が得られた講演でした。水谷先生ありがとうございました。

講演で一番印象に残ったことは水谷先生の長い臨床経験の中で、大昔から重篤なメトホルミンの副作用として知られる乳酸アシドーシスが起きたことはない、というお話でした。リスクの高い患者への投与を避けることはもちろんで、患者の状態をきちんと見守りながらの処方を大切にして来られました。実際に血液検査で乳酸値を測定しても変化が起きたことがなく、項目にいれなくなった経緯があることもお話されていました。もともと乳酸アシドーシスという副作用は10万人に一人起きるかどうかの確立だそうですから、まずは患者さんの体調の変化を知れば大きな障害は起こさずに済みます。

薬剤師としてもメトホルミン服用患者さんが食事がきちんと摂れているか、風邪をひいていないか、下痢が続いていないかなど、気づいたことは医師にフィードバックすべき情報です。また、メトホルミン服用者は過度の飲酒もダメです。過度でない飲酒は日本酒1合、ビール中瓶1本までだそうです(⌒-⌒; )

また、メトホルミンは糖新生を抑えることが主な作用ですが、AMPキナーゼ活性化による作用は糖尿病患者さんの発癌リスクを1/2程度に下げるそうです。もともと糖尿病患者さんは発癌リスクが高い傾向があるそうです。ピオグリタゾンの影響も取り沙汰されて米国では訴訟も起きましたが、結局は薬剤による発癌リスクの上昇は否定されて、糖尿病患者の元々のリスクであることが結論づけられているそうです。(ピオグリタゾンの新規処方はできなくなってしまったそうですが(^^;;) メトホルミンですが、お話をきいているとやはりインスリンを強化するタイプの薬より色々とベネフィットが大きいような印象を受けます。勉強会の最後に大日本住友製薬株式会社茨城支店長のご挨拶をいただきましたが、メトホルミンがもしかしたら抗がん剤になるかもしれないと言ってました。

そうはいっても水谷先生の病院でも今の第一選択はDPP4阻害薬で、肥満がある人や体重増加をきたす人にメトホルミンを処方したり、併用したりすることが多いそうです。メトホルミンとDPP4阻害薬の相性はとても良いそうです。

それから、薬剤師として気になることでは、かつて食後服用だったメトホルミンは今は食前で処方するこが可能になっていて、食前の方がやや効果が高いかもしれないという話がありました。基本的に併用薬とのマッチングで服用法は決めるそうですが、メトホルミンでは特に高用量で食欲の抑制作用があるので、体重減少や血糖上昇の予防に効果がでやすいこともあるそうです。

まとめとしては、メトホルミンは2型糖尿病において、用量依存性に血糖コントロールを改善できる。インスリン抵抗性を改善して体重増加をきたさないので肥満2型糖尿病患者には第一選択になる。そして、動脈硬化性合併症の進展予防効果も報告されている。最近は癌発症抑制効果が注目されている。重篤な副作用の乳酸アシドーシスはリスクをさけることで発症は抑えられる。とのことでした。

 

座長をつとめられた(急遽の代役でしたが)新委員長の小室先生におかれましては、ご苦労様でした、とても立派でした(Good job!)、今後とも宜しくお願いいたしますm(_ _)m