院外処方せん応需薬局 平成29年5月勉強会

5月25日に日立薬剤師会の5月の勉強会が行なわれました。

今回は日立総合病院の森川亮先生にお越しいただき、「最近の糖尿病治療」として、糖尿病の基礎知識、治療目標、症例や最近のトピックについてご講演いただき、勉強することができました。

まず、糖尿病の種類についておさらいで、1型糖尿病、2型糖尿病について確認、その他の糖尿病では膵炎・肝炎・内分泌疾患が原因のものもあること、最近は妊娠糖尿病が増えているとのことでした。妊娠糖尿病の患者さんは妊娠中は定期検診などで通院は続けるのですが、出産後、病院に来なくなってしまうのが心配と森川先生はお話されておりました。

基本的には2型糖尿病の患者さんが増え続けているということで、現在は世界で10秒に2人が糖尿病を発症しているそうです!(◎_◎;)

遺伝因子がなければ、運動不足、過食、肥満が原因ですから、気をつけねばなりませんね、自戒します(⌒-⌒; )

 

森川先生は治療薬の実際の選択についてもお話をしていただき、大変勉強になりました。

 

糖尿病の治療は早期から厳格なコントロールが重要とのことです。早期に治療することで、血管障害、心筋梗塞などの発症リスクを低下させることができるようになりました。合併症の自覚症状が起きてから受診するという事態が起きないようにしたいものですし、薬局でできること、セルフメディケーションの啓蒙も大切だと感じました。薬局の検体測定室ももっと利用率を上げるべきだと思います。

 

処方の実際では、患者さん個々で、治療目標も異なり、選択する薬剤の組み合わせも異なります。多剤併用で血圧の薬が2種類、高脂血症の薬が2剤、糖尿病治療薬が3種類なんて処方や、もっと薬の種類が多い処方だってあります。7種類以上の薬剤を処方すれば医師の処方料は減算されてしまいます。ポリファーマシー云々される時代では処方せんに薬がいっぱい書いてあるだけで、眉をひそめる人がいるかもしれません。

森川先生のお話で印象的だったのは、医師は必要だから薬を多剤併用するのだということです。

治療にあたって、副作用の発現は当然防ぐために服用量の調整もしているし、腎機能、年齢も考慮して判断を繰り返しています。薬剤による治療で患者さんが救われているのはまぎれもない事実です。症例の紹介もしていただき、森川先生のお話には納得できます。

 

最新のトピックではSGLT2阻害薬の心血管イベントの抑制効果についてがありました。製薬会社もカナグリフロジンのCANVAS試験という大規模の臨床試験の結果がもうすぐ出るということです。

発売当初、脱水や尿路感染、脳梗塞などのリスクが検査されたSGLT2阻害薬ですが、現在は6種類7製剤あり市販後調査では目立つ副作用はない状況です。

心血管イベントを合併すると2型糖尿病患者の死亡リスクは跳ね上がるそうですから、SGLT2阻害薬の体重減少や血圧低下効果とともに心血管イベントの抑制効果が確認できればとても使いやすい薬剤になるのかと思います。

 

また、2年前に発売されたGLP−1作動薬についての症例も森川先生により紹介されました。この注射剤については期待は大きいですが、実際の処方はまだまだ少ないのが現状です。しかし実際の処方例ではHbA1Cが9%を超えて続くコントロール不良の症例で劇的な効果を得ているようです。

森川先生もたとえばトルリシティなどは手技がとても簡単で週1回の接種を続けることは患者の負担にならないはずと期待を寄せています。

SGLT2阻害薬とGLP1作動薬の併用なんかも効果が期待できそうですね!

 

 

糖尿病の患者さんは、どれだけ自分が危険な状態なのかわかっていないというお話がありました。

自分の病態をいかに理解するか、治療薬の必要性をきちんと理解して持続して治療をするかはとても大切です。血糖値を下げることが大きな目的ではありません、また、すべての患者に向いている薬はないとお話されました。薬剤の組み合わせが少なくないケースで必要になります。

薬を服用せず治療する、運動食事療法は、まずは当たり前のことです。

薬を減らすことができれば、それに超したことはありません。でも患者の命を守ったり、合併症を防ぐためには多剤併用は必要なことでもあります。

 

結局、森川先生がおっしゃりたいことが最後にわかったのですが、患者さんに薬の必要性や使用法、注意をいかに理解してもらうかが治療のとっかかりとして重要ということです。

インスリンの導入をいやがる患者は少なくないそうです。注射というと静脈注射のような仰々しい、痛い怖いというイメージを持つ方が多いそうです。実際の短くて痛くない針の皮下注射を理解してもらうまでに時間がかかります。

多剤併用で何種類も薬を飲むのは、それだけでお腹がいっぱいになってしまいそうだし、副作用が心配だし、不安を感じる患者さんもいます。

GLP−1作動薬についても、注射であることが処方選択にいたらない理由になるそうです。この薬が簡単に接種できて効果があり安全な薬であることを理解することが必要で、かつ難しいからです。

 

私たち薬剤師の存在意義は、医療への参画において、やはり処方する医師と処方される患者の間にあるのだなと感じるお話でしたし、森川先生も患者の服薬アドヒアランスを向上するために薬剤師に活躍してほしいと願っています。

患者さんの治療において、ベストな薬剤が選択されて導入されるために、果たせる役割が薬剤師にはある、または責任があると感じました。

 

森川先生、貴重なお話をありがとうございましたm(_ _)m

 

 


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