ジェネリック医薬品という言葉は、最近CMやポスターなどでもよく目にします、また広告だけでなく、健康保険組合などからジェネリック医薬品の使用を勧める案内が届いたりします。まずジェネリック医薬品とはどういったものなのでしょうか?
ジェネリック医薬品とは、最初に発売された医薬品の特許が切れた際に、同じ有効成分・同等の効き目をもつ医薬品として厚生労働省から承認を受けて発売される医薬品です。後から発売された医薬品ということで、後発医薬品と呼ばれたりもします。
最初に開発・承認・発売された医薬品のことを先発医薬品と呼びますが、そちらの特許は約20年~25年程度ですので、そちらが切れたあとにジェネリック医薬品は販売されることになります。
Q.同じ有効成分が使われているということですが、同じものではないのですか?
A.同じ有効成分、すなわち症状に対して効果のある成分は同じですが、添加剤が異なっているものもありますので、全く同じものというわけではありません。
Q.ジェネリック医薬品では添加剤が異なっているとのことですが、効果については一緒なのでしょうか?
A.はい。有効性や安全性に違いがないということは、試験を行って確認しています。また、添加剤そのものにも治療効果を妨げない・無害であるものと決まりがありますので、安心して服用できます。
添加剤が異なっているということは、一般的に食品などで言えば甘味料や着色料などに関する部分です。ジェネリック医薬品の製造において、この添加剤の違いを生かしている場合があります。
例えば、苦みや匂いを抑える、錠剤を小さくする、口の中で溶けやすいタイプにしてお薬の形を変えるなどです。患者さんが服用しやすいようにお薬に工夫を加えて、先発の医薬品には無い利点を生み出しているのです。
Q.なるほど。ジェネリック医薬品の方が飲み易かったり、使い易かったりする場合があるのですね!
A.はい。特に高齢者やお子さんの場合、服用しやすい形に変えることで、嫌がらず飲んで頂くことができて治療がうまくいくことに繋がりますね。
形が変わっている場合には、保存がしやすい、持ち運びが便利になるということもあります。
Q.色々な工夫がされているのがわかりました。それでは、先発医薬品からジェネリック医薬品に変更すると良いことばかりなのですか?
A.ジェネリックに変更する際の注意点として2つほどお伝えしておきたいと思います。
まずひとつ目として、添加剤が基本的に無害であっても、稀に体質によってはアレルギーを起こす可能性もあるという事です。ただ、この点についてはジェネリックであっても、そうでなくても起こり得ることになります。
ふたつ目は、主に外用薬といわれるシップやクリーム・軟膏などについてです。添加剤が違うため、場合によってはべたつきが違う・スースーするなど貼り心地や塗り心地という使用感が異なる場合があるということです。
もちろん、それぞれの好みになるかと思いますが、患者さんによっては、ジェネリックのほうが工夫されているので合っているという方もいらっしゃいます。その点については、ぜひ病院や薬局で御相談して頂ければ、より自分に合った形でお薬を続けていくことが可能ではないでしょうか。
Q.自分に合う形を見つけていくことが大事なんですね。
ジェネリック医薬品はお薬代が安くなるという話も耳にしますが、なぜ安くなるんですか?
A.その理由としては、ジェネリック医薬品では有効成分の研究や一部の試験をする必要がないためです。
まず、最初に開発されている先発の医薬品では、有効成分の発見・研究から試験までを含めて販売するまでに早くて約10年~15年ほどかかり、その金額は数百億円。場合によっては数千億円とも言われています。
しかし、ジェネリック医薬品では販売までの期間は約5年程度であり、費用も約1億円と100分の1~1000分の1程度にまで下がります。結果として、その分が値段を安く出来る差ということになります。
Q.それだけ変わるとなると、値段が安くなる理由も分かります。しかし、お得だと思う反面、やはり少し品質が心配になります。
A.実際、ジェネリックの説明をさせていただいた際に、そうおっしゃる方は少なくないです。安くなるということで、不安な気持ちを持っている方もいらっしゃるかと思いますので、もう少しご説明させていただきます。一部の試験がおこなわれないという点についてですが、これには有効成分に関する試験のことを指しています。試験が必要でない理由としては、先発の医薬品ですでにその安全性を確認できているためです。
Q.それ以外の試験はされているんですか?
A.はい。ジェネリック医薬品であっても、どれくらいの時間で溶けて、どれくらいの保存が効くかなど、違いが生じる可能性のある部分については先発の医薬品と大きな差が出ないよう試験されています。
次に有効成分、原薬と呼ばれる部分についてです。これについては輸入等に関わらず審査が行われ、品質の低いような粗悪なものが承認されるということはありません。ジェネリックに関わらず、先発の医薬品においても海外から輸入されているものはありますが、安全性が欠けるということは基本的にありません。必要な部分については、しっかりと試験が行われています。このようにしっかりとした審査・管理のもと作られていますので、安心して飲んで頂くのが一番です。
ここまでジェネリック医薬品についてお話してきましたが、少し進んだ話として、ジェネリック医薬編のなかでも、オーソライズドジェネリックについて知って頂きたいと思います。
Q.オーソライズド…ジェネリック、ですか?馴染みのない・聞き慣れない言葉です。
A.はい。横文字で分かりづらいかもしれませんね。販売されている数自体、多くはありませんが、これは先発医薬品の特許が切れる前に販売できる少し変わったジェネリック医薬品です。
Q.先ほどまでは特許が切れてからということでしたが、オーソライズドと呼ばれるものは切れる前から販売されているんですか?
A.はい。これは製薬会社同士の契約によって、先発医薬品の製造会社が、後発医薬品の製造会社に製造特許の使用権を与えるのです。特許が切れる前に販売できるジェネリック医薬品です。
Q.そんなものがあるのですね。販売時期以外は先ほどまでのジェネリック医薬品と一緒なのですか。
A.いえ、これは先ほどまでとは違い、先に開発された医薬品と全く同じものになります。
全く同じという言葉には違和感があるかもしれませんが、オーソライズドジェネリックは同一の原薬・製法で作られている点に加えて、添加物も先発医薬品と同じです。
Q.添加物も同じという点は先ほどお話にあがったジェネリック医薬品とは違いますね?
A.はい。オーソライズドジェネリックは、販売している製薬会社により、お薬への印字や名前が異なるだけであり、原薬から添加物、そして製造方法まで同じです。しかし、こちらも開発のコストがかかりませんので、値段は安くなります。そんな都合のよい話があるのかとお思いかもしれませんが、本当なんです。
オーソライズドジェネリックは、先発医薬品から後発医薬品に変更する際にも、今まで服用していたものと全く同じですから、添加物の違いによるアレルギーなどを心配される方にはさらに安心して服用していただけると思います。
しかし、オーソライズドジェネリックは、製造特許の使用権を与えられて後発医薬品製造会社がつくりますので、先のはなしに出た、後発医薬品ならではの工夫を加えられません。それはオーソライズドジェネリックの欠点になるかもしれません。
ここまでジェネリック医薬品について、簡単にお話させて頂きました。薬局で変更した際の金額を聞いても、10円20円安くなるだけのことがあるかもしれません。個人負担の軽減になるとはいってもそれほど大きくは感じられないと思います。
しかし、国として医療費を削減することは、新しい医療技術やお薬の開発に向けていくことに繋がります。また、医療費を削減することが、日本の国民皆保険制度を持続させるためにも必要なことです。
Q.はい。未来のために、ということですね。
A.処方せんのお薬のうち、一つだけ変更することも可能です。興味をもった方や不安が解消された方がいれば、病院や薬局で先生とぜひ相談してみてください。
三和堂薬局大みか店
今野尚耶