院外処方せん応需薬局 平成29年6月勉強会

6月15日(木曜日)日立薬剤師会の勉強会が開催されました。

今回は日立総合病院の副院長、消化器内科の鴨志田敏郎先生にお越しいただき、「便秘に関するお話〜過敏性腸症候群と便秘〜」と題してお話いただきました。

便秘症について、患者の増加、適正な診断の必要性、薬剤の適切な使用について、わかりやすく説明していただきました。

まず、便秘あるあるとして、

患者さんが便秘を簡単に考える傾向があり、主治医がいたとしても、ついでに便秘薬も処方してちょうだい、などと、なんとなく付け足しで処方されてしまうことはよくあるのではないでしょうか、ということです。

便秘症は実は、後期高齢の人では、男性の方が症状がある方が多いそうです、便秘薬を主治医に処方してもらうケースが多くなるのですが、消化器内科の医師ではないことが多く、適正な診断と処方が行われていない状況があるそうです。

診断と患者認識の相違について、

器質的疾患(大腸ガン、腸捻転、潰瘍性大腸炎など)においては、診断と患者の症状の認識に相違はありませんが、機能的疾患(検査をしても腸に異常がみられない)においては、診断と患者認識(残便感、腹痛、腹部膨満感、食欲低下など)に相違があらわれるそうです。FD(機能性ディスペプシア)も機能的疾患のひとつだそうです。

便秘症には明確な定義はないそうです。

便秘≠便秘症ですが、患者さんの症状の聴取が治療の第一歩になります。また、便秘による患者さんの状態にも留意しなくてはならなくて、排便量の減少による、腹部膨満感、腹痛、お腹が張って苦しいなどの症状はよくあるはずです。便形状の変化、硬い便だけではなく、腸内の硬い便の隙間から液状の便が出ていても便秘には変わりはないこと。そして、便秘症の方が排便時にいきむことで血圧が高くなったり、あるいは肛門部に痛みがおきたりなど、便秘による排便のトラブルも、高齢者や循環器に病気を持つ方にとっては大きな問題になります。

ここで閑話休題で排便時の姿勢について鴨志田先生からお話がありました。

直腸肛門角があり、排便は寝たままではスムースにいかず、洋式便器などで足と胴が90度の角度(横から見て)で座っても、背もたれに寄りかかるような姿勢では角度が悪く、便器に座って前傾になり、しかも足の下に台をおいて、足と胴の角度が35度くらいが丁度排便に適しているそうです。それはつまり、和式便器で排便する姿勢に重なるそうです。

まぁ、なんとなく和式便所では気持ち良くでるなぁ、とは思っていましたが(⌒-⌒; )

最近は和式便所が少なくなりましたが、旅行や遠征で高速道路を長時間利用するときなど、パーキングエリアなどのトイレで和式を探したりしてますねぇ、なんとなくお尻を付けなくて良いのも清々とするというか・・・・

ともあれ、現代では洋式便器が主流ですし、高齢者などが安楽に利用できなくてはなりません。

なので、オーギュスト・ロダン作「考えるひと」だそうです。鴨志田先生には、かのブロンズ像は思索をしている姿には見えないそうです。トイレでまねましょう(≧∇≦)

 

便秘の治療目標ですが、便の回数を正常化するとともに、お腹がはったり、痛んだり、食欲がなくなるなどの症状を治すことが大切とのことです。

ブリストル便形状スケールの紹介がありました。

このスケールにおける目標は2〜4の状態だそうですが、鴨志田先生によるとこれは英国で作られた尺度なので、日本人においては3か4が良いとのことでした。

慢性便秘の診断と治療については、器質的疾患については原疾患の治療が便秘の治療にもつながります。

そして、便秘の原因は、器質的なもの、神経性のもの、代謝障害によるものなど様々にありますが、機能的疾患における、二次性便秘の原因についてのお話がありました。

いわゆる、薬剤性の便秘です。向精神薬や抗うつ剤、カルシウム拮抗剤や抗がん剤など、様々な薬剤の服用が便秘の原因になることがあります。そのなかでもオピオイド製剤による便秘については、新薬が発売されたというトピックのお話もありました。

いわゆるオピオイドと言われる薬剤は、中枢性オピオイド受容体に作用して鎮痛効果を発揮しますが、末梢性のオピオイド受容体を介して作用すると消化管運動、消化管神経運動が抑制されて便秘になります。新薬は、この末梢の方のオピオイド受容体でオピオイド製剤に拮抗することで、薬剤による二次性便秘を治療する薬剤だそうです。

診断のうえで、便秘の警告症状についてもお話がありました。最近発症した便通の異常、体重減少、直腸の出血がある、さらに50歳以上などの条件では、大腸ガンの可能性を考えて検査してから便秘の治療をする必要があるとのことです。

また、便秘型のIBS(過敏性腸症候群)と機能性便秘のオーバラップというお話があり、厳密な区別は難しいそうです。ただ、便秘IBSでは、ブリストル形状スケールで良好な便形状になっていても、腹痛などの症状があるのが特徴だそうです。

お話は、便秘の治療、対症療法に移っていきます。

WBO(World Gastroenterology Organisation)世界消化器学会と訳してよいのですかね(⌒-⌒; )

のガイドラインを示していただきました。

まず第一段階としては、生活習慣の改善、食事指導、食物繊維の摂取、水分の摂取指導、またサプリメントの利用などです。

次の段階では、浸透圧性下剤(ラクツロースなど)やルビプロストン、リナクロチドを処方

それでもだめなら、刺激性下剤、浣腸、消化管賦活剤の処方になるそうです。

このガイドラインで特徴的なのは、日本でよく使われる酸化マグネシウムが全く登場しないことです。これについて鴨志田先生は、日本は軟水で普段マグネシウムの摂取量は少ないが、欧米の水は硬水だから普段からマグネシウムの摂取は一定量あり、さらに服用することがないのではないか、また心臓に病気がある方などは、マグネシウムの吸収がリスクになることがあるので用いられないのではないかと考察しておられました。

また消化管賦活剤の処方においては、モサプリドなどより、FD治療剤のアコファイドの方が効果が得られるとのお話がありました。

日本では便秘に適応がある漢方製剤が何種類もあるので、日本人の先生では刺激性下剤の使用前の段階で漢方製剤を使用するガイドラインを作っている方もいるお話しもありました。

その他の便秘の治療では、ごく稀に外科的治療があったり、一部の便秘の症状には、バイオフィードバックといわれるトレーニングや骨盤底筋のトレーニングなどをおこなう病院もあることをご紹介いただきました。

 

便秘に対する薬剤の服用について、ここから本題というか、大切なお話ですが、便秘の患者さんの薬の濫用についてお話がありました。

便秘関連商品はセルフメディケア商品市場で300億円をこえるそうで(O_O) 兎角、便秘の方は医師に相談するよりも、市販薬を購入して連用することが多いとのことです。

便秘症状を軽く考えることが受診にいたらない理由の一つではあるようです。

問題なのは、市販の刺激性下剤を連用した結果です。

刺激性下剤を連用することにより、メラノーシスコリという腸の器質的変化が起きるそうです!

内視鏡検査で大腸内が真っ黒になったり、ヒョウ柄のような模様を呈する患者さんがいるそうですが、刺激性下剤の1年以上の連用が原因とのことです。センナやピコスルファート、市販薬以外でも、よく使われる漢方製剤のなかで、ダイオウを含むもの、まあアロエ製剤は同じく連用でメラノーシスを起こすことがあるそうです。

メラノーシスは腸内の色が変化するだけではなく、器質的変化として、過長結腸、結腸拡張、ハウストラ消失(腸のヒダヒダがなくなる)となっていくそうです。組織にマクロファージが集積して神経細胞が減少していくのが原因と考えられるそうです。

 

つまり、そうなんです! 便秘は適切な診断と正しい薬剤の選択による治療が必要なんです。便秘といったって、どこが痛くて、どんな便で、何回でるのか、いつからなのか、みんな違うのです。

 

先生は、便秘患者のQOLの低下についてお話されました。身体的精神的QOLが低下すると、日常活動性障害率と労働生産性低下率が高くなってしまうのだそうです。便秘の患者さんはC型肝炎の患者さんより高いのだそうです。

例えば、C型肝炎の治療は大きく進歩しましたが、薬剤の使用による治療が終了するまでレクサス1台分かかります。でも肝炎の治療は労働生産性低下率をうんと下げる効果が高いので、高額でも許されるのではないでしょうか。つまり利益が大きい。

だから、便秘の治療も、たかが便秘と思わないで、安価な薬はたくさんありますが、適正な診断のもと適正な選択で多少高額な薬を服用しても、QOLをあげることが大切ではないかというお話です。

また、メーカー様の説明にもありましたが、リナクロチドの作用機序における安全性についても確認していただきましたし、今後は便秘治療の主流になるのではないかと思われます。

実際、刺激性下剤は習慣性があり、習慣的使用により抵抗性を獲得して服用量が増えるという悪循環が起きて、慢性便秘を重症化させ、結果メラノーシスにつながります。また便秘症による結腸がん発症リスクが高くなりますが、刺激性下剤服用者に多いのかもしれないとのことです。

 

便秘はまず、早いうちに適正な診断をうけて、早めに治療を開始して、慢性化させないことが大切です。

刺激性下剤の濫用になる前に、現在は新しい薬も登場して治療の選択肢も増えています。センナ、センノシド、酸化マグネシウムに比べれば、確かにリナクロチド、ルビプロストンアコチアミドなどは薬価が高いのかもしれません。でも、代え難い価値がそれにあることがよくわかりました。

 

まずは、今までを振り返って、戒めも必要かと思いました。下剤の連用を見過ごしているケースはあると思います。

今後、この知識をどう生かしていくか、それが問題です( ̄▽ ̄)

鴨志田先生、このたびは大切なお話をありがとうございましたm(_ _)m

 

 

東京バ○ナ

ブリストル便形状スケールで3から4。日本人の理想の形状だそうです( ´ ▽ ` )ノ

 

 

 

 

 

院外処方せん応需薬局 平成29年5月勉強会

5月25日に日立薬剤師会の5月の勉強会が行なわれました。

今回は日立総合病院の森川亮先生にお越しいただき、「最近の糖尿病治療」として、糖尿病の基礎知識、治療目標、症例や最近のトピックについてご講演いただき、勉強することができました。

まず、糖尿病の種類についておさらいで、1型糖尿病、2型糖尿病について確認、その他の糖尿病では膵炎・肝炎・内分泌疾患が原因のものもあること、最近は妊娠糖尿病が増えているとのことでした。妊娠糖尿病の患者さんは妊娠中は定期検診などで通院は続けるのですが、出産後、病院に来なくなってしまうのが心配と森川先生はお話されておりました。

基本的には2型糖尿病の患者さんが増え続けているということで、現在は世界で10秒に2人が糖尿病を発症しているそうです!(◎_◎;)

遺伝因子がなければ、運動不足、過食、肥満が原因ですから、気をつけねばなりませんね、自戒します(⌒-⌒; )

 

森川先生は治療薬の実際の選択についてもお話をしていただき、大変勉強になりました。

 

糖尿病の治療は早期から厳格なコントロールが重要とのことです。早期に治療することで、血管障害、心筋梗塞などの発症リスクを低下させることができるようになりました。合併症の自覚症状が起きてから受診するという事態が起きないようにしたいものですし、薬局でできること、セルフメディケーションの啓蒙も大切だと感じました。薬局の検体測定室ももっと利用率を上げるべきだと思います。

 

処方の実際では、患者さん個々で、治療目標も異なり、選択する薬剤の組み合わせも異なります。多剤併用で血圧の薬が2種類、高脂血症の薬が2剤、糖尿病治療薬が3種類なんて処方や、もっと薬の種類が多い処方だってあります。7種類以上の薬剤を処方すれば医師の処方料は減算されてしまいます。ポリファーマシー云々される時代では処方せんに薬がいっぱい書いてあるだけで、眉をひそめる人がいるかもしれません。

森川先生のお話で印象的だったのは、医師は必要だから薬を多剤併用するのだということです。

治療にあたって、副作用の発現は当然防ぐために服用量の調整もしているし、腎機能、年齢も考慮して判断を繰り返しています。薬剤による治療で患者さんが救われているのはまぎれもない事実です。症例の紹介もしていただき、森川先生のお話には納得できます。

 

最新のトピックではSGLT2阻害薬の心血管イベントの抑制効果についてがありました。製薬会社もカナグリフロジンのCANVAS試験という大規模の臨床試験の結果がもうすぐ出るということです。

発売当初、脱水や尿路感染、脳梗塞などのリスクが検査されたSGLT2阻害薬ですが、現在は6種類7製剤あり市販後調査では目立つ副作用はない状況です。

心血管イベントを合併すると2型糖尿病患者の死亡リスクは跳ね上がるそうですから、SGLT2阻害薬の体重減少や血圧低下効果とともに心血管イベントの抑制効果が確認できればとても使いやすい薬剤になるのかと思います。

 

また、2年前に発売されたGLP−1作動薬についての症例も森川先生により紹介されました。この注射剤については期待は大きいですが、実際の処方はまだまだ少ないのが現状です。しかし実際の処方例ではHbA1Cが9%を超えて続くコントロール不良の症例で劇的な効果を得ているようです。

森川先生もたとえばトルリシティなどは手技がとても簡単で週1回の接種を続けることは患者の負担にならないはずと期待を寄せています。

SGLT2阻害薬とGLP1作動薬の併用なんかも効果が期待できそうですね!

 

 

糖尿病の患者さんは、どれだけ自分が危険な状態なのかわかっていないというお話がありました。

自分の病態をいかに理解するか、治療薬の必要性をきちんと理解して持続して治療をするかはとても大切です。血糖値を下げることが大きな目的ではありません、また、すべての患者に向いている薬はないとお話されました。薬剤の組み合わせが少なくないケースで必要になります。

薬を服用せず治療する、運動食事療法は、まずは当たり前のことです。

薬を減らすことができれば、それに超したことはありません。でも患者の命を守ったり、合併症を防ぐためには多剤併用は必要なことでもあります。

 

結局、森川先生がおっしゃりたいことが最後にわかったのですが、患者さんに薬の必要性や使用法、注意をいかに理解してもらうかが治療のとっかかりとして重要ということです。

インスリンの導入をいやがる患者は少なくないそうです。注射というと静脈注射のような仰々しい、痛い怖いというイメージを持つ方が多いそうです。実際の短くて痛くない針の皮下注射を理解してもらうまでに時間がかかります。

多剤併用で何種類も薬を飲むのは、それだけでお腹がいっぱいになってしまいそうだし、副作用が心配だし、不安を感じる患者さんもいます。

GLP−1作動薬についても、注射であることが処方選択にいたらない理由になるそうです。この薬が簡単に接種できて効果があり安全な薬であることを理解することが必要で、かつ難しいからです。

 

私たち薬剤師の存在意義は、医療への参画において、やはり処方する医師と処方される患者の間にあるのだなと感じるお話でしたし、森川先生も患者の服薬アドヒアランスを向上するために薬剤師に活躍してほしいと願っています。

患者さんの治療において、ベストな薬剤が選択されて導入されるために、果たせる役割が薬剤師にはある、または責任があると感じました。

 

森川先生、貴重なお話をありがとうございましたm(_ _)m

 

 

院外処方せん応需薬局 平成28年9月勉強会

9月15日(木)に日立薬剤師会定例の勉強会がおこなわれました。

第一三共製薬株式会社様のご協力を得て、講師に千葉クリニックの院長、千葉一博先生をお招きすることができました。

今回は、テーマ「血栓症」として「心房細動に対する新しい治療について」をご講演いただきました。

とてもわかりやすく内容をまとめていただき、読みやすいレジュメもお作りいただいたうえ、日常の診療における感慨や信念を織り交ぜたお話もあり、最新の治療法の解説もしていただくという、なんというか、講演を聞いた者は得をした勉強会でした。

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お話はまず、心房細動の種類と典型的な所見について説明していただきました。

心房細動による心原性脳塞栓症の治療について、抗凝固剤による服薬治療にばかり意識が向くきらいがあり、なんとなく、抗凝固剤をのんでいれば自覚症状がそんなにない心房細動なら不整脈自体はそのままでも大丈夫なのかな、などと思っていました。なので、そもそもの心房細動の病態と治療について学ぶ良い機会になりました。

心房細動には発作性心房細動(7日以内に自然停止する心房細動)、持続性心房細動(7日以上自然停止しない心房細動)と永続性心房細動(除細動が不能または試みられなかった心房細動)があり、初発心房細動(初めて診断された心房細動)も含めて分類します。自然停止する心房細動であっても症状を繰り返すうちに永続性心房細動になりうるということでした。

心房細動の治療としては、初発や発作性心房細動で48時間以内ならば除細動をおこなうそうです。Ia群の抗不整脈薬を用いて実施しますが、除細動の成功率は約30%だそうです。少ないですが電気的除細動をおこなうこともあるそうです。

心房細動になって48時間経過していると、すでに左房内血栓ができている可能性が高いそうです。薬剤で脈拍のコントロールをおこないつつワルファリンカリウム療法を一定期間実施し、そのうえで除細動をおこなうそうです。抗凝固剤の服用は除細動の後も最低4週間は必要とのことです。

3ヶ月以上続く心房細動では、除細動しても洞調律に戻る可能性は低いので脈拍のコントロールと抗凝固療法を続けるとのことです。

 

ところで、抗凝固薬についてですが、直接Xa阻害剤とトロンビン直接阻害剤は今までNOACと呼ばれてきました。でも国際血栓止血学会がDOACと呼ぶことを推奨しているそうです。今回の勉強会でも千葉先生はDOACという呼称を使用されていました。今後はDOACと呼ばれることになるようです。

NOAC(Novel Oral Anti Coagulants)からDOAC(Direct Oral Anti Coagulants)です。レジュメから写しました(^^;;

 

さて、心房細動は心原性脳塞栓症の原因になりますが、非心原性脳塞栓症のアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞についても解説していただきました。並べて病態と原因について解説していただいたので、心原性脳梗塞の重症度が高いことを確認できました。やはり抗凝固療法は大切です。

 

そして、白色血栓と赤色血栓のお話が印象に残りました。

動脈に生じる血栓は、血小板が主体となっており、「血小板血栓」「白色血栓」と呼ばれるそうです。これに対し、静脈血栓は、フィブリンと赤血球を主体とする「フィブリン血栓」「赤色血栓」が生じます。動脈は血流が速いことに起因する血栓で、静脈は血流が遅いことに起因し、凝固系因子が働いて血栓の形成をします。なんのことか分かりにくいですが、千葉先生による、川岸の砂的血栓(白色血栓)と池の藻的血栓(赤色血栓)という表現が腑に落ちました。

白色血栓には抗血小板剤、赤色血栓には抗凝固剤を適用することがよく理解できます。

そして、心房細動があると心房内で赤色血栓がべったりと形成され、それが剥がれて脳の血管まで流れると、脳の太い血管で詰まるわけです。

赤色血栓のことからもわかる通り、千葉先生も繰り返しお話されていましたが、心原性脳塞栓症には抗血小板剤は全く無効で、有害事象しか来さないということになります。

そこで、やはり抗凝固療法は必要で大切です。有用性はあってもリスクが心配で処方に踏み切れないケースも、日立医師会が主導する心房細動連携パスなど、専門医との連携により解消する方向に進みそうです。

 

千葉先生の処方について、実臨床における苦悩なども織り交ぜたお話のなかで、やはりワーファリンの処方におけるPT-INRコントロールの煩雑さ、相互作用の懸念、出血リスクの不安から解放されるDOACは使いやすく、信頼できる薬剤になるようです。

薬剤選択の基準としては、やはり診療の際に実感している服用回数が少ない方がアドヒアランアスが向上するということ、1日1回服用がよい。服用が想定される高齢者は腎機能が落ちますから、腎排泄が少ない薬剤も条件になります。

千葉先生は自分で服用するならエドキサバンとおっしゃっていました。まあ、勉強会を開いていただいたメーカー様にご配慮をいただいたのもあるでしょうが、実際に信頼できる条件にあう薬剤だそうです。体重で減量できたり、60mg錠を半錠で処方すると値段を安くできるので、DOACの欠点である患者負担金が高くなる問題も解決できるようです。

 

結論では、やはりDOAC療法は心房細動による心原性脳塞栓症発症抑制のスタンダードな治療になること。患者のアドヒアランス向上のためにやはり薬剤師には大きな役割があることをご教示いただきました。改めて気を引き締めなければなりません。

 

最後に、最近日立総合病院でもはじまったカテーテルアブレーションについても解説していただきました。千葉先生の患者さんもこの治療により心房細動が完治した事例もあるそうです。また、発作性心房細動と永続性心房細動では手術の方法が違うそうです。

 

千葉先生、この度はわかりやすく多岐にわたる講演をいただきありがとうございました。個人的には、このブログを見てくださって感想をいただけたことがうれしかったです。

 

さらに個人的には、何年も前のことですが、私の愚息が定期接種で千葉クリニックにお世話になった際に、大暴れして何度もけっとばしてしまってすみませんでしたm(_ _)m 私の家内によると先生は蹴られながらも注射してくれたそうです;^_^A

 

日立心房細動連携パスと薬剤師の役割

2月17日水曜日にホテル天地閣にて、日立医師会主催の「日立心房細動連携パス説明会」がおこなわれました。

医師の研修会なのかと思われましたが、医師会から薬剤会へも案内がきましたので、それではと、こっそりお話をうかがわせていただきました。でも、きちんと薬剤師の役割の説明もあり、なるほどと思いました。

 

まず、市内脳外科の先生より、「当院へ入院した心原性脳塞栓症患者の状況」と題して、脳塞栓症の約3割(多分;^_^A)にあたる心原性の脳卒中患者の現況についてお話がありました。心原性の脳塞栓症患者の多くはかかりつけ医をもっていること、抗凝固薬の服用には至らず、抗血栓剤の服用にとどまる患者が多いことの説明がありました。

心房細動を持つ患者には抗血栓剤は無効で、抗凝固剤の投与がどうしても必要であるという事実の確認をされました。

印象的なのはアスピリン製剤についてのお話です。アスピリン製剤は服用していても心原性の脳塞栓症には全く無効で、連用による有害事象しかおきないことのデータの説明がありました。安易なアスピリン製剤の処方は、あいまいな判断の収束であり、抗凝固薬の処方の決断を促進するためにもこの連携パスは重要な役割を果たすようです。

 

その後も抗凝固薬の処方の障害になっている、副作用の心配と患者のコンプライアンスの悪さのお話がありました。

ワーファリンは相互作用や納豆などの食事の制約、出血リスクを患者が受け入れないこと、NOACは価格が高いことがコンプライアンス低下の原因になるというお話もありました。そもそも患者は病気の自覚がないという問題もあります。

 

未治療の患者よりも、心房細動の診断を受けているのに、抗凝固剤の処方を受けずに病気を発症する患者が一定数いる状況を打破するために「日立心房細動連携パス」をたちあげるというながれです。

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市内のかかりつけ医は、心房細動の患者を循環器科がある病院に紹介して、こまめな検査と管理においてワーファリンまたはNOACの導入をして、後に自院に戻ってもらう、継続的な抗凝固剤の処方をおこなうための連携づくりが目的です。これは抗凝固薬の導入時の副作用の懸念や患者のコンプライアンスの向上において、専門医が介入することによる問題の解消を得られるもので、結果的に救われる患者の数を増やすことになります。

連携パス実施の際には、ワルファリンカリウムかNOACかを患者の背景を含めて紹介することもできるようにするとのことです。つまり、かかりつけ医から患者の服用薬についての希望の伝達もおこなわれ、尚且つ、患者の年齢、腎機能などを考慮した薬剤の選択の支援もされます。高額な薬を固辞する患者にはワルファリンカリウムの導入もあり得るし、服用コンプライアンスがしっかりしている患者はNOACの導入も早期に可能としての加療とか、ワルファリンカリウムとNOACの相互の切り替え時の紹介受け入れとか、判断の連続と連携を病院間でおこなってゆくことになります。

 

 

それでは、薬剤師の役割はというと

一番にもとめられるのは服薬指導において、NOACなら怠薬をさせないための工夫や、ワーファリンなら服用における相互作用の注意になるわけです。特に医師の先生方はNOACの服用管理が悪い患者が存在する現実と遭遇する事例をもって、薬剤師にはしっかり働いてもらいたいと願っています。ワーファリンからNOACに切り替わった患者が服用をしないでいる頻度が多ければ、まさに命にかかわるリスクが大きくなるわけです。

 

そして、これ「心房細動連携パスシート」です

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「日立心房細動連携パス」のツールにお薬手帳が利用されることになりました( ´ ▽ ` )ノ

このシートはシール紙になっていて1枚はお薬手帳の1ページに入るサイズになっています。お薬手帳ですから、患者の服用薬についての項目はこのシートに含まれません。

患者がお薬手帳を、かかりつけ医から専門医へ、または専門医からかかりつけ医へ繋ぐことによって、連携パスが成り立つシステムです。

このシートには薬剤師の記入欄もあります、患者の服用状況について必要なことは記載しなくてはなりません。患者の命を守るために、薬剤師も最大限の誠意をもって医療に参画しなければならないし、それを求められています。

そして、原点に帰って、お薬手帳の重要性を啓蒙してゆくのも役割のひとつなのだと思います。電子お薬手帳が取り沙汰される今日この頃ですが、やはりアナログのツールの必要性と重要性を再認識させられた出来事でもあります。

医師が連携のツールに選んだのはアナログの、手に取れる手帳であることをしっかり胸に刻み、今後の薬局のあり方を模索してゆく必要があるのではないでしょうか。

安易なデジタルのルーチンに陥ってしまう日常から、やはり人間構造の根本であるアナログまたは、複雑機械である生物としての混沌なる表現である乱筆による文字を、書くことが必要ではないかと思うわけですよ( ̄▽ ̄)

 

 

とりとめのないまとめですみませんm(_ _)m

簡易懸濁法勉強会

12月22日午後7時30分から開催されました。

この研修会については、日立薬剤師会学術部の安部先生(あべ調剤薬局)にご尽力いただきました、お疲れさまでした!感謝申し上げます。誰かが骨を折ることで様々な環境や知識が得られることを改めて認識して、次の行動につなげて行かなければならないのではないかとも感じた研修会でした。

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講師は大洗海岸病院薬剤部長の新井克明先生と群馬県済生会前橋病院薬剤部主任薬剤部長の秋山滋男先生です。お二人とも簡易懸濁法研究会で正式に認定を受けている数少ない講師の先生です。

http://plaza.umin.ac.jp/~kendaku/

内容は、まあ間違いなく勉強なりましたし、今後の薬剤師をとりまく環境では必須の技能と知識だと思います。

一部内容紹介( ´ ▽ ` )ノ

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実は細粒剤も懸濁にはなじまないものも多いのだそうですよ。細い経管を、とある細粒剤(錠剤の規格あり)やアルギン酸ナトリウムのシロップ剤(ドロドロで意味がある)を通せないことを実験で確認することができました。簡易懸濁法においては、安易に錠剤から細粒剤や散剤への変更をすることは服用を困難にさせることになることを確認しました。

私の経験では、錠剤を粉砕して欲しいという処方の場合、錠剤の嚥下が難しくなってきて、トロミをつけて飲み込むためというケースが多いので、味や粉砕による性状の変化を考えれば粉薬を選択できる場合はそれがベターになるケースもあります。しかし、簡易懸濁は経口の服用にも利用できるだろうな、という実感も得ました。

 

これはとある口腔内崩壊錠を懸濁したものです。ふたつのカップには同じ錠剤をいれて懸濁しました。

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右と左の違いは水の温度です、左は熱湯に近い温度の水で、右は常温に近いかなりぬるい水です。低温の方はうまく懸濁できていますが、左の高温で懸濁しようとしたものは凝固して沈殿してしまっています。これは錠剤の崩壊後に薬の主成分をコーティングしている添加剤が高温で溶けて固まってしまうためとのことです。OD錠の懸濁服用は簡単だと思っていたので目からうろこです。熱湯でなくても、通常の簡易懸濁法の水温の55℃でも起きる可能性があるそうですから知っておかねばなりません。

 

これは錠剤は青いレボドパ・カルビドパ配合錠を懸濁したものです。左のカップには、もう一種類とある錠剤も後からいれて懸濁してあります。

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想像はできるかと思いますが、後から入れた錠剤は酸化マグネシウムの錠剤です。薬剤は配合変化がおきたことで失効してしまいます。レボドパはアルカリ性下で酸化分解が促進されるため、酸化マグネシウムと混合すると効果が低下します。しかし、胃の中では胃酸で中和されるのでアルカリ性下に置かれることなく、内服で服用する場合はそんなに起きない現象だそうです。服用経路による配慮は当然しなければならくて、粉砕にも注意が必要で、また一包化調剤も気をつけなくてはならないと肝に銘じます。

 

衝撃! ある薬剤を懸濁して放置しておいたカップ(ポリスチレン性)が溶けてしまいました!

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この薬の正体は・・・

まあ研修に出た人にきいてください( ? _ ? )

べつに服用するのに危険なわけではありません、配合変化は薬剤の間だけで起こるわけではないのだという勉強をさせていただきました。

 

今回の研修会は内容も質もとても素晴らしいものでした。そして多くの方に参加いただきましたが、その期待に十分応えられる内容だったと思います。

重ね重ね準備から尽力された方々に感謝申し上げます。今後も知識と技能の向上のためにブラッシュアップできる研修会の実施を期待しています。そしてそれを実行していくためには地域の薬剤師個々人の協力が必要なことは言うまでもないと思います。

 

 

日立薬剤師会院外処方せん応需薬局学術講演会

「日立薬剤師会院外処方せん応需薬局学術講演会」という今まで日立薬剤師会の学術委員会がおこなってきた勉強会とは一味違うような、リニューアルされたような勉強会でした。学術委員会の委員長が変わりましたので、新委員長の意気込みが感じられる勉強会でした!今後も期待したいです。

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特別講演は「メトホルミンの適応症例と安全性~他の糖尿病薬との併用も含めて~」でした。小沢眼科内科病院の副院長 水谷正一先生の講演です。小沢眼科内科病院は常勤医が15名いる大病院です。メトホルミンについて復習にもなり、新しい知識も得られる、糖尿病の臨床例も含めた得難い知見が得られた講演でした。水谷先生ありがとうございました。

講演で一番印象に残ったことは水谷先生の長い臨床経験の中で、大昔から重篤なメトホルミンの副作用として知られる乳酸アシドーシスが起きたことはない、というお話でした。リスクの高い患者への投与を避けることはもちろんで、患者の状態をきちんと見守りながらの処方を大切にして来られました。実際に血液検査で乳酸値を測定しても変化が起きたことがなく、項目にいれなくなった経緯があることもお話されていました。もともと乳酸アシドーシスという副作用は10万人に一人起きるかどうかの確立だそうですから、まずは患者さんの体調の変化を知れば大きな障害は起こさずに済みます。

薬剤師としてもメトホルミン服用患者さんが食事がきちんと摂れているか、風邪をひいていないか、下痢が続いていないかなど、気づいたことは医師にフィードバックすべき情報です。また、メトホルミン服用者は過度の飲酒もダメです。過度でない飲酒は日本酒1合、ビール中瓶1本までだそうです(⌒-⌒; )

また、メトホルミンは糖新生を抑えることが主な作用ですが、AMPキナーゼ活性化による作用は糖尿病患者さんの発癌リスクを1/2程度に下げるそうです。もともと糖尿病患者さんは発癌リスクが高い傾向があるそうです。ピオグリタゾンの影響も取り沙汰されて米国では訴訟も起きましたが、結局は薬剤による発癌リスクの上昇は否定されて、糖尿病患者の元々のリスクであることが結論づけられているそうです。(ピオグリタゾンの新規処方はできなくなってしまったそうですが(^^;;) メトホルミンですが、お話をきいているとやはりインスリンを強化するタイプの薬より色々とベネフィットが大きいような印象を受けます。勉強会の最後に大日本住友製薬株式会社茨城支店長のご挨拶をいただきましたが、メトホルミンがもしかしたら抗がん剤になるかもしれないと言ってました。

そうはいっても水谷先生の病院でも今の第一選択はDPP4阻害薬で、肥満がある人や体重増加をきたす人にメトホルミンを処方したり、併用したりすることが多いそうです。メトホルミンとDPP4阻害薬の相性はとても良いそうです。

それから、薬剤師として気になることでは、かつて食後服用だったメトホルミンは今は食前で処方するこが可能になっていて、食前の方がやや効果が高いかもしれないという話がありました。基本的に併用薬とのマッチングで服用法は決めるそうですが、メトホルミンでは特に高用量で食欲の抑制作用があるので、体重減少や血糖上昇の予防に効果がでやすいこともあるそうです。

まとめとしては、メトホルミンは2型糖尿病において、用量依存性に血糖コントロールを改善できる。インスリン抵抗性を改善して体重増加をきたさないので肥満2型糖尿病患者には第一選択になる。そして、動脈硬化性合併症の進展予防効果も報告されている。最近は癌発症抑制効果が注目されている。重篤な副作用の乳酸アシドーシスはリスクをさけることで発症は抑えられる。とのことでした。

 

座長をつとめられた(急遽の代役でしたが)新委員長の小室先生におかれましては、ご苦労様でした、とても立派でした(Good job!)、今後とも宜しくお願いいたしますm(_ _)m

 

第156回県北薬剤師勉強会

平成27年8月7日金曜日に開催されました。

「心房細動と抗凝固療法-臨床薬理学的視点から考える-」東京女子医科大学病院 循環器内科 准教授 志賀剛先生のご講演です。

循環器内科の先生から抗凝固療法の最新のお話が聞けました。心房細動患者の合併症である脳卒中を防ぐために臨床薬理学的視点からみた考察です。

非弁膜症性心房細動と血栓塞栓症の関係、抗凝固療法と大出血リスクの問題で、新しい薬NOACを用いた時に実臨床では十分なデータがなく、ケースバイケースで診療が行われているという枕詞から始まりました。つまりは、検証的試験で得られたデータは実臨床では当てはまることはなく、リアルワールド(個別化治療)を求めていくというのです。

まず、心原性脳梗塞はアテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞とともに脳梗塞の3分の1を占める疾患ですが、他の脳梗塞に比べて重症になる確率が高く罹患した患者の60%は元の生活に戻れないそうです(他の脳梗塞は同じ重症度では18〜25%とのことです)。だから抗凝固療法は重要になるわけですが、抗凝固療法はどういった患者に必要かというお話がありました。

志賀先生は主にCHADS2スコアという評価方法点数化して抗凝固療法が必要な患者を洗い出します。大雑把にいうと、○心不全があるか、○高血圧があるか、○年齢が75歳以上か、○糖尿病はあるか、○脳卒中の既往があるか(各1点ではなかったです^^;)、という項目を点数化して患者に当てはめるのです。CHADS2スコアが2点以上の患者で抗凝固療法が有用という評価になるそうです。このスコアが2点とはどういうことかというと年率で100人に4人に脳梗塞が起こるということで発症年率が4%ということだそうです。つまりCHADS2スコアが2点では確実に脳梗塞になる人が4%いるわけで治療の有用性があると判断されるわけですが、治療をしなくても脳梗塞にならない確率の方が高いわけです(これ、間違った理解をすると怠薬や自己判断の服用中止につながりそうです、ほっておけば病気になる可能性はどんどん高くなるのですから服用しなくていけません)。だから大出血などの致命的なリスクがあってはならないというわけです。

CHADS2スコアの評価項目にあるリスクにより脳梗塞の発症率が高くなるのは、動脈硬化が結果として起きることが大きな要因で、血小板が活性化し てなおかつフィブリンと いう凝固タンパクが増えます、そして心房細動がおこり血栓ができてしまうと、河川の淵で水流が滞り土砂がたまるように、河川の流れに例えられるような形状の血管内では、血流の淵ができて土砂の堆積のように血栓がどんどんたまるのだそうで す。

他にもCHA2DS2-VASCスコアというCHADS2スコアよりもさらに細分化された脳卒中発症リスクの計算方法も紹介されましたが、大雑把にいうと(-。-;実際には病歴がない人も含めてCHADS2スコアが2点に満たない人がピラミッドの階層の底になるわけで、数が1番多いわけです、数が多いので脳卒中の発症する患者の数も相対的に多くなるということで、そのスコアの低い人たちの中で発症する患者を評価して治療しようということです。それでそのCHA2DS2-VASCスコアで2点と評価された人が抗凝固療法が有用になるのですが、このスコアの2点というは先の発症年率でいうと2.2%ということですから、やっぱり副作用のない治療でなければならないわけです。いかにデメリットを減らすか、出血のリスクを減らさなければ抗凝固療法は成り立たないわけです。

抗凝固療法と大出血リスクにおいて、ワーファリンの治療域を見た時に欧米ではPTINRが3.0までが基準ですが、日本人では2.6を越えると出血が多くなるのだそうです、つまり日本人は欧米人に比べて脳卒中のリスクが高いわけです。それで日本のワーファリンのガイドラインではPTINRは1.5〜2.5とされているわけです。しかし志賀先生はガイドラインを超えて個別に数値を判断する必要もあるのではないかともお話されました。先のCHA2DS2-VASCスコアが2点の治療対象者にもしワーファリンを使うのであれば、CHADS2スコアが高い治療対象者と同じガイドラインで判断すべきではないのではないかという様なことでした。リアルワールドの話につながりますね。また、HAS-BLEDスコアという抗凝固療法を行う心房細動患者における、重大な出血事象の発現リスクを評価する方法もご紹介いただきました。そして印象に残ったのは抗血小板剤の併用が出血リスクをかなりあげるということでした。

NOACsのガイドラインについてのお話がありました、治験(RCT)で得れたデータをもとにしたガイドラインはコンプライアンスが良好な状況下でしかないわけで、十分なスクリーニングもされていない云々・・・^^;。なので、ガイドライン通りのままではリアルワールドの臨床は行えないとのことでした。それではいかに安全でかつ有効にNOACSを使うかというと、臨床薬理学的視点が必要になるのだそうです。

ワーファリンとNOACsの薬物動態学的特徴が個別化治療をするうえでの判断に必要となるものです。例えば腎障害がある患者ではワーファリンよりNOACsの方が影響は大きいわけです。併用薬の影響も受けます、NOACsも数は今の所限られますが重大な相互作用を起こす薬剤があります。血中濃度が高くなると大出血のリスクが高くなるのはどちらも同じですが、ワーファリンはPTINRを測定することで凝固能を定量できるという安心感があるようです。NOACsは併用で作用が増強される薬剤もさることながら、リファンピシンの様に併用で効果がなくなる薬剤がある方が大きな問題であるとのことです。ワーファリンであれば相互作用がある薬剤と併用しなくてはならない時にPTINRをみながら薬剤の量を調整して投与することが可能ですが、NOACsの場合、相互作用を定量評価が全くできないのでどうなるかわからないのだそうです。

「薬はのまないと効かない」という格言(?)を引き合いに、ワーファリンを新規導入した心房細動患者の4分の1の方が1年以内に治療をやめてしまうことをからめて、服用遵守に対する用語、コンプライアンスからアドヒアランスへの概念の変化についてもお話いただきました。ワーファリンをやめてしまう患者は、若く、CHADS2スコアが低いかたで(病気の自覚が足りない人なのかな^^;)INRのコントロールも不良でコンプライアンスが低いとのことです。コンプライアンスとは医療では上から目線の行為ですが、ならばコンプライアンスが悪くても、患者主体の概念を持つアドヒアランスはどうなのか?とうことでした。

そしてワーファリンと作用が同等以上で副作用が少ないと検証されたNOACにアドヒラランスが向上することが期待されたのです・・・・

しかし結局の話、ワーファリンと比べてNOACsはアドヒアランスの向上に寄与しなかったそうです。志賀先生の病院ではNOACsを服用した患者の方が皮下出血や胃腸障害(むかつきなど)を起こすことが多く、本来服用中止になり得ない事象が理由で患者は治療をやめてしまうのだそうです(なぜ有害事象がワーファリンに比べてNOACsの方が気になる結果に至るのかはよく理解できませんでしたが、服用当初の服薬指導というか、変な言い方だけれど治療開始時の気軽さみたいなものが関係あるのかもしれないとは思いました。薬剤師が果たす役割が大きいのではないでしょうか)。途中で服用をやめてしまうと、服用を継続しているよりも6〜25倍も血管イベントが増えるそうですので大問題です、これはワーファリンでもNOACsでも同じリスクです。

抗凝固療法をやめてしまった人の8割は「自分は脳梗塞は起こさない」と思っているそうです。そして同じく5割の人は薬に対する不満(飲みにくい、副作用がある)を持っているそうです。患者の立場に立ってみると、どんな薬が良いか。1日1回服用が良い、副作用が少ない(胃のむかつきが起きない)などが求められるとのことです。

元々ワルファリンカリウムの大出血のリスクを回避できるNOACsだったはずですが、抗血小板剤の併用時には大きな出血のリスクもあるそうです。相互作用がある薬剤の併用があったとしても作用の評価ができるワーファリンの方が信頼して投与できる場面もあるとのことです。臨床のリアルワールドでは杓子定規なガイドラインは通用しない、患者個別に治療、投薬の選択をしていかなければならないということでした。患者の年齢、高齢患者の性別、脳卒中の既往、腎障害、抗血小板剤の併用、相互作用、ワーファリンとPTINR、大出血のリスク、薬物動態から考えられる問題(バイオアベイラビリティ、腎排泄率、代謝など)、そして患者さんの気持ち。

今講演の結論にもなっていますが、患者さん一人一人にとってBestな薬剤が選択されるためにアドヒアランスの問題を解決しなくてはなりません。それは薬剤師が役割を果たすときだとも思います。

公認スポーツファーマシスト認定制度 基礎講習会

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東京基礎講習会に行ってきました。

実はスポーツファーマシストの基礎講習会に出るのは2回目です(⌒-⌒; ) 基礎講習会は資格取得をする場合に1回だけ受ければよいので、2回受けることは普通ありません。講師と講習の内容はほぼ同じでした。前回は3年ほど前ですが、講習だけは受講を続けて勉強しましたが、認定を受けることはしませんでした。

あくまでも個人的な考えですが(^^;;

スポーツファーマシストなんて横文字の肩書きをつけていますが、どうなんでしょう?。ドーピングと禁止薬物については、薬剤師として使命感を感じれば自然な知識として身につくことで、薬の情報提供をおこなうのに、認定された別の資格が必要なはずはありません。要は、スポーツ選手が意図しないうっかりドーピングをさけるために、薬やサプリメントの成分に、ドーピング検査にて陽性になる物質が含まれるか否かの情報提供をするのです、調べても判断できる材料がなければ、最終的に判断できないと伝えればよいのですし、情報提供時に誤解を与えないようなコミュニケーションスキルが必要なことや、正確な情報をアップデートすることは薬剤師の業務そのものです。テキストは日本薬剤師会が作成して毎年会員に配布しています。スポーツファーマシストには、ドーピング検査を実施したり、薬の治療使用特例に関する申請書を作成したりするような権限などは全くありません。普段ドーピング検査対象のアスリートにもなかなか会わないとも思いますが(⌒-⌒; )

それでは何故、しつこく講習を受けたかというと、アンチドーピング活動には賛成なのです。アンチドーピングの啓蒙活動には協力したいですし、自分の所属する競技団体なら尚更、是非協力したいと考えています。悪意がない結果的に陥るうっかりドーピングから、選手は守られなければなりません(普段周囲にそんなアスリートはいないかもしれませんが、将来の大器はいるかもしれません^ ^)。また地域で啓蒙活動が必要だったり、学校教育の一環で必要であれば、地元の人間が対応すべきではないかと思います。そのために「スポーツファーマシスト」という認定が必要なのであれば認定を受けておくべきだろうということです、広報企画委員会もやっていますし。

2019年には茨城国体が開催されます。国体はドーピング検査の対象になる大会です。日立市も国体の会場になりますから、対応に困ることがないようにしておかなくてはならないとも思います。スポーツファーマシストも少しは市内の会員の中で増えていただけたら良いかなと思います。

うっかりドーピングを防ぐために草の根の活動というか、気軽に相談できる環境づくりのためにスポーツファーマシストは存在するのでしょう。薬局ならどこでも誰でも気軽にアンチドーピングについて相談できる環境が理想なのです、スポーツの立場からすればですが。

私は認定を受ける予定です、 今回はたぶん。気持ちを維持できれば・・・、JADAに腹をたてるようなことがなければ・・・・( ;´Д`)

 

第12回 日立三師会合同研究会特別講演会

平成27年7月17日午後6時45分開会 ホテル天地閣にて第12回日立三師会合同研究会講演会が開催されました。

まず話題として「認知症について」を日立総合病院の副院長藤田恒夫先生からお話いただきました。

あらためて世界的に高齢化社会に向かうなかで、増え続ける認知症という病気と医療・介護は戦わなければならない、今後認知症や認知症合併症による死亡率があがる未来において為すべきことは何か、というお話でした。世界的に4秒に一人の速さで認知症患者が増えているそうです、現在日本でも軽度認知障害を含めると1000万人弱の認知症患者がいるそうです。

認知症の早期発見、早期治療をしましょうと言われていますが、現在は根本的な治療法がない状況で、早期発見は早期絶望につながってしまうのではないか、とのことです。脳機能の画像診断などが進歩して早期診断は正確になってきているので、根本的な治療のためにはより早く正確な診断とより早い介入が必要だそうです。

薬剤の使用はどれも対症療法にしか過ぎないというお話が印象に残りました。藤田先生がよく使われる薬は、ドネペジル、レミニール、リバスタッチ、メマリー、抑肝散、リスパダールなどで、認知症の中核症状・周辺症状にもある程度効果が期待できますが、いずれの薬も副作用が強く出たら中止すべきとのことです。リハビリ・介護を含めた包括ケアが大切で必要なことだそうです。

科学の話題も有りました! 医療・介護の近代技術はSF映画のような領域に差し掛かり、サイバーダイン社のロボットスーツを装着すれば運動機能障害をもつ患者さんも歩くことができる時代が来るそうです。このロボットスーツは生体電位信号で動くので、脊椎が切れている人では動かないそうです。でも、ブレインマシンインターフェイスというテクノロジーが発達してきて、これは頭にセットして念じると、その念がどういう作用に変わるのかは理解できませんでしたが(ー ー;) 指を動かせるところまで研究が進んでいるそうです。すごいですね(O_O) ところが、このような素晴らしデバイスがあったとしても認知症の患者さんの助けにはならないそうです´д` ; いわゆる人間の活動を司る高次機能が障害をうけていると、やるべきことを念じることができないわけです。神経科学のさらなる発展に期待したいということでした!

まとめとしては、近い将来に認知症や認知症合併症のための死亡率が上昇するにあたり、終末期医療のあり方を考えて、EOLC(End of Life Care)チームの育成をしていかなればならないとのことです。包括ケアのチームでは薬剤師も是非活躍したいと思います!

 

そして特別公演「認知症の食べることの問題」を菊谷武先生(日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長)からお話いただきました。

菊谷先生のクリニック(クリニックといっても歯科医は20人いて、1日100人以上の患者さんを診て、月に一人で150人の在宅診療をおこなっているそうです!)では主に摂食と嚥下についての治療に重きをおいて行っているそうです。なにしろ在宅患者はほぼ認知症だそうです。

認知症と診断を受けたら、まず歯科に紹介すること!というお話がありました。認知症の方は歯磨きという複雑なプロセスを実行することが困難になること、認知症の進行とともに口を開けることができなくなることなどから、口腔内環境は悪化の道をたどり、結果歯の脱落なども起こして咀嚼嚥下の障害につながってしまいます。だから、認知症と診断されたら、まず歯科にかかり、突貫でもよいので口内の整備をしておく必要があるそうです。なるほど!

認知症患者の食に関する問題点は、口を開かなくなる、いつまでも噛んでいる、スプーンを噛む、食べようとしない、食べ物を口に溜め込む、ことがあるそうです。これは先行期障害にもとづく摂食行為の異常がみとめられること、緩徐に進行する運動機能の障害が影響すること、前頭葉障害による原始反射が再現することなどが原因というか特徴だそうです。(原始反射とは、赤ちゃんがおっぱいや指を反射的に吸ったり、顎を動かしてもぐもぐ食べることを自然に行うことだそうで、認知症により再現するそうです。)認知症患者の自発的な食事の訓練は難しく、環境改善的アプローチで対応することが主体だそうです。

また、記憶障害に伴う食事の問題点もあります。食べたことを忘れる、次の食事がいつかわからないこと。意味記憶障害により食具の使用法がわからなくなりスプーンや箸が使えない、または逆に、手続き記憶の保持によって箸を上手に使うことだけができる(車の運転にも同じ現象がみられることがあります(O_O))、箸を使えても咀嚼や嚥下ができずに誤嚥や窒息の事故につながることもあるそうです。

見当識障害があると、食べ物を食べ物とわからなかったり、ぬいぐるみを食べてしまうなどの異食がおこることがあるそうです。また実行機能障害という、目的を持った一連の行動ができない障害があると(食べ物を口に入れて噛んで、移動させて、すり潰して、集めてまとめて飲み込むことができない)、嚥下機能は年齢相応にある人でも、食事の順序だてができずに早食い(尋常じゃない早さ!)、またはつめ込みが起こり肺炎や窒息などの摂食事故につながるそうです。日本そば(そば、薬味、つゆ、わさび、海苔などが何を意味するのかわからず、もちろん作法などわかるすべもない、食べ物にさえ見えていないこともあるそうです)を例にお話をされました。

認知症患者の食事をどうすればよいか。口内の環境がよくないまま推移すれば、やはり固い食べ物を口に入れるのは危険だそうです。でも完全な介助をするまえにできることはあるそうです。認知症患者は食事の手順がわからず、食事がはじめられない状態になっています。食事の手順で行動提示を行うそうです。方法は同じ動作をして見せることだそうです、また最初の行動のうながしが大切で、スプーンをもつ手を介助する方が一緒にもって、手を持ったまま食事を口に運ぶ動作を続けることも効果があるそうです。

それから情報過多がいけないそうで、視野に入る情報・耳に入る情報を制限することは必要だそうです、テレビや猥雑な環境に注意です。情報を制限してシンプルにすること、それは食事を一度に出さずに順にお膳することで目の前の菜をシンプルに食べることなどが効果的だそうです。食器もシンプルなものがよく、陶食器などの柄や模様が食べもに見えるそうです、空のお茶碗をいつまでも持って、箸で絵柄を掻いている動画を観ました。白い茶碗に入った白いご飯よりも漆椀にはいった白いご飯の方が食べやすいそうです(写真でもコントラストがくっきりしてました)。

また、お茶碗やお皿がたくさんあるお膳よりもどんぶりものの方が食べやすい傾向は間違いなくあるそうです(写真では色々なおかずをご飯にのせていました、ロコモコ丼みたいなものもよいのかも)。そして、食具の使用が難しいのですから、手に持って食べられるものは嚥下の負担にならないものなら、食べられるものが多いそうです、サンドウィッチ、おにぎり、ちくわなど。

なにしろ食べもに「力」があることが大切だそうです。味はメリハリがありしっかりパンチがある方が好まれます。温度も暖かいか冷たいかはっきりしていた方がよいそうです。見た目もパンチ力が必要でハッキリ食器と区別がつくものがよいです。

そうするとカレーライスがベストオブ献立になるそうです!完食率が高いそうです!私も歳をとりすぎても食べたい食べ物のひとつなのでよかった( ^ω^ )

もうひとつ認知症の食の問題では、特にレビー小体型認知症で多いそうですが、幻視による摂食障害があるそうです。ご飯のごま塩が蟻に見えたり、蛇が食器の間をうねっていたりするそうです。

摂食・嚥下で一番の問題は不慮の事故です。不慮の窒息事故で亡くなる方は不慮の交通事故で亡くなる方の倍になるそうです。主に介護老人施設でおこる窒息事故で、どのような人が事故に至るかというと、臼歯部咬合がない、認知機能障害がある、そしてもう一つの条件として食事が自立していることがあるそうです。食事の自立で大切なことは、自分でどのくらい食べたのか?ではなく、自分でどうたべたのか?だそうです! 歯がなくて咀嚼ができないとそのまま飲み込みますので窒息につながるそうです。

咀嚼力=咬合支持×口の力強さ・巧みな動き×認知機能

私たち薬剤師も、特に在宅訪問の現場で患者さんの体調チェックの一環として口内環境チェックや食事の取り方の確認など、できることはありそうです。とてもすばらしい講演を拝聴できてよかったです。

講演会の後に懇親会がありましたが、我が薬剤師会の会長と、医師会会長と歯科医師会会長が次回11月の三師会合同研究会講演会について何やら相談していたようです(⌒-⌒; )

がんばりましょう!

第153回県北薬剤師勉強会

「『COPD患者の未来は吸入指導で決まる!』~COPD治療の主役は薬剤師」

このタイトルなので襟を正して話を聞かねばなりません。

講師は筑波大学附属病院、ひたちなか総合病院の寺本信嗣先生でした。呼吸器内科の先生で、COPDの認知度を上げるための啓蒙活動をされており、一般書、専門書等を上梓して活躍されております。

肺と呼吸に不安があるときに読む本 (早わかり健康ガイド

COPDの病診連携と在宅管理 (Monthly Book Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション))

まず、COPD(慢性閉塞性肺疾患) は年々増え続けており、しかも2020年には日本の死亡原因ランキングの第3位になる勢いだそうです。また、現在治療されている患者は50万人ほどです が、推定患者数は700万人だそうです。未治療になってしまう理由は、症状が重症化しないと受診行動にうつらないこと(病気の認知度がひくすぎる)と、他 に慢性疾患がある場合、例えば循環器科で治療を受けている場合に発見が遅れることがあるそうです。そしてアメリカとの比較では禁煙運動に数十年の遅れがあ るので、煙草の消費量が完全に下降を初めていないそうです。COPD患者数は日本では今後30年増え続けて、欧米の患者数が下降する時代も、日本では深刻 な問題が続くらしいです。アジアでは中国からの大気汚染の影響も大きいそうです。

そこで、COPDの治療をどうにかしなくてはならないので すが、先生は長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を上手に使って生活の質を改善する、悪くしないことだとおっしゃいました。(薬物療法とはべつに治療の当 初は1に禁煙、2に禁煙、3、4も禁煙とのことでした、吸入薬治療の実践としてはLAMAと)

COPDは、息は吸えるが、吐けない病気で す。放置すると「眠れない」「お風呂がつらい」「食事がまずい」「トイレがつらい」ことがあらわれるそうです。このような症状をなくすことが治療の目標と もおっしゃっていました。息切れも含めて、COPDを自覚することは難しく(加齢や他の病気を考えてしまうこともあるそうです)、治療が遅れがちになりま す。今は優れた治療薬があるのできちんと吸入できれば症状を改善することができます。でもそうは問屋がおろさないとのことです。

吸入薬は作 用する気道の細胞まで運ばれないと意味がありません。そしてCOPDは気管支喘息よりも気道の病変が末梢に起こる傾向があるそうです。そのため吸入をきち んとしたとしてもすべての患部に薬が届くことはあり得ないような状態のなかで、効果を上げるためには、やはり薬剤師の魂を込めた!仕事が必要とのことで す。

信じられない吸入薬の誤用の例をお話しされました。「胸に近い所につけたほうが良いと思ってと、エアロゾルを胸に直接噴霧」「吸入用ブリスターのカプセルを内服」など本当にあった話だそうです。

吸入デバイスや、ドライパウダー製剤とエアロゾル製剤の違いがありますが、ようはきちんと効果をあげるために薬が気道病変部へ届くことが大切です。(スピリーバについてはハンディヘラーとレスピマットがありますが、先生は断然レスピマット1択とのことです)

坑コリン製剤としての禁忌についても話されていました。吸入製剤は局所作用なので、通常問題ない。全身作用があったとしても製剤の用量が少ないものばかりなので心配しすぎないほうがよいとのことです。疑義照会の電話がかかってくると困ってしまうのでしょうね(⌒-⌒; )。新薬の「エクリラ」は作用時間が短いので尿閉をもしも起こしてしまう患者にも使いやすいのではとのことでした。

COPD患者への薬剤師の役割は大きいと思いました。在宅医療との関わりも合わせると、想定しているよりもできることは多いのかもしれません。

そ して、薬剤の進歩によるあらたな問題もお話しされました。LAMA、LABA、とステロイド、また配合剤の登場により、重複投与が起こりやすくなっている そうです。COPDは生活習慣病の一つとして内科治療が行われる現状と未来がありますから、専門医でなくても当然診療を行います。吸入剤の併用は当然ある わけで、薬剤師は重複投与を防がなければなりません。

話のまとめでは、COPDは治せば高齢者は元気になります。吸入薬を本物の治療薬に変えられるのは「優秀で親切な薬剤師の先生」です。COPD治療に魂をいれましょう!(しっかりやってくれ)とのことでした。

数年前にフランスの凱旋門賞という世界一の競馬競技会で、ディープインパクトがドーピング(禁止薬物使用により)で失格になったことについて、雑談で解説されていたことが、個人的に参考になりました。馬はCOPDになるそうです(O_O)