かかりつけ薬局に求められる機能とは?-厚労省が検討会で論点提示 (医療介護CBニュース) – Yahoo!ニュース

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下手な記事を読んでも内容がよく掴めないので議事録の掲載を待ちたいところです。24時間対応については薬剤師会の代表から現状を示して現実的な意見も出されたようですし、多職種連携における薬剤師会の役割や、「健康づくり支援薬局(仮称)」の改築・新築時における不動産取得税の軽減措置などについても議論されたようです。

日本薬剤師会が職能団体として存在を示していくことできていれば、地域薬剤師会の地道な活動も報われるかなぁ〜なんて思います(^ ^)

第156回県北薬剤師勉強会

平成27年8月7日金曜日に開催されました。

「心房細動と抗凝固療法-臨床薬理学的視点から考える-」東京女子医科大学病院 循環器内科 准教授 志賀剛先生のご講演です。

循環器内科の先生から抗凝固療法の最新のお話が聞けました。心房細動患者の合併症である脳卒中を防ぐために臨床薬理学的視点からみた考察です。

非弁膜症性心房細動と血栓塞栓症の関係、抗凝固療法と大出血リスクの問題で、新しい薬NOACを用いた時に実臨床では十分なデータがなく、ケースバイケースで診療が行われているという枕詞から始まりました。つまりは、検証的試験で得られたデータは実臨床では当てはまることはなく、リアルワールド(個別化治療)を求めていくというのです。

まず、心原性脳梗塞はアテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞とともに脳梗塞の3分の1を占める疾患ですが、他の脳梗塞に比べて重症になる確率が高く罹患した患者の60%は元の生活に戻れないそうです(他の脳梗塞は同じ重症度では18〜25%とのことです)。だから抗凝固療法は重要になるわけですが、抗凝固療法はどういった患者に必要かというお話がありました。

志賀先生は主にCHADS2スコアという評価方法点数化して抗凝固療法が必要な患者を洗い出します。大雑把にいうと、○心不全があるか、○高血圧があるか、○年齢が75歳以上か、○糖尿病はあるか、○脳卒中の既往があるか(各1点ではなかったです^^;)、という項目を点数化して患者に当てはめるのです。CHADS2スコアが2点以上の患者で抗凝固療法が有用という評価になるそうです。このスコアが2点とはどういうことかというと年率で100人に4人に脳梗塞が起こるということで発症年率が4%ということだそうです。つまりCHADS2スコアが2点では確実に脳梗塞になる人が4%いるわけで治療の有用性があると判断されるわけですが、治療をしなくても脳梗塞にならない確率の方が高いわけです(これ、間違った理解をすると怠薬や自己判断の服用中止につながりそうです、ほっておけば病気になる可能性はどんどん高くなるのですから服用しなくていけません)。だから大出血などの致命的なリスクがあってはならないというわけです。

CHADS2スコアの評価項目にあるリスクにより脳梗塞の発症率が高くなるのは、動脈硬化が結果として起きることが大きな要因で、血小板が活性化し てなおかつフィブリンと いう凝固タンパクが増えます、そして心房細動がおこり血栓ができてしまうと、河川の淵で水流が滞り土砂がたまるように、河川の流れに例えられるような形状の血管内では、血流の淵ができて土砂の堆積のように血栓がどんどんたまるのだそうで す。

他にもCHA2DS2-VASCスコアというCHADS2スコアよりもさらに細分化された脳卒中発症リスクの計算方法も紹介されましたが、大雑把にいうと(-。-;実際には病歴がない人も含めてCHADS2スコアが2点に満たない人がピラミッドの階層の底になるわけで、数が1番多いわけです、数が多いので脳卒中の発症する患者の数も相対的に多くなるということで、そのスコアの低い人たちの中で発症する患者を評価して治療しようということです。それでそのCHA2DS2-VASCスコアで2点と評価された人が抗凝固療法が有用になるのですが、このスコアの2点というは先の発症年率でいうと2.2%ということですから、やっぱり副作用のない治療でなければならないわけです。いかにデメリットを減らすか、出血のリスクを減らさなければ抗凝固療法は成り立たないわけです。

抗凝固療法と大出血リスクにおいて、ワーファリンの治療域を見た時に欧米ではPTINRが3.0までが基準ですが、日本人では2.6を越えると出血が多くなるのだそうです、つまり日本人は欧米人に比べて脳卒中のリスクが高いわけです。それで日本のワーファリンのガイドラインではPTINRは1.5〜2.5とされているわけです。しかし志賀先生はガイドラインを超えて個別に数値を判断する必要もあるのではないかともお話されました。先のCHA2DS2-VASCスコアが2点の治療対象者にもしワーファリンを使うのであれば、CHADS2スコアが高い治療対象者と同じガイドラインで判断すべきではないのではないかという様なことでした。リアルワールドの話につながりますね。また、HAS-BLEDスコアという抗凝固療法を行う心房細動患者における、重大な出血事象の発現リスクを評価する方法もご紹介いただきました。そして印象に残ったのは抗血小板剤の併用が出血リスクをかなりあげるということでした。

NOACsのガイドラインについてのお話がありました、治験(RCT)で得れたデータをもとにしたガイドラインはコンプライアンスが良好な状況下でしかないわけで、十分なスクリーニングもされていない云々・・・^^;。なので、ガイドライン通りのままではリアルワールドの臨床は行えないとのことでした。それではいかに安全でかつ有効にNOACSを使うかというと、臨床薬理学的視点が必要になるのだそうです。

ワーファリンとNOACsの薬物動態学的特徴が個別化治療をするうえでの判断に必要となるものです。例えば腎障害がある患者ではワーファリンよりNOACsの方が影響は大きいわけです。併用薬の影響も受けます、NOACsも数は今の所限られますが重大な相互作用を起こす薬剤があります。血中濃度が高くなると大出血のリスクが高くなるのはどちらも同じですが、ワーファリンはPTINRを測定することで凝固能を定量できるという安心感があるようです。NOACsは併用で作用が増強される薬剤もさることながら、リファンピシンの様に併用で効果がなくなる薬剤がある方が大きな問題であるとのことです。ワーファリンであれば相互作用がある薬剤と併用しなくてはならない時にPTINRをみながら薬剤の量を調整して投与することが可能ですが、NOACsの場合、相互作用を定量評価が全くできないのでどうなるかわからないのだそうです。

「薬はのまないと効かない」という格言(?)を引き合いに、ワーファリンを新規導入した心房細動患者の4分の1の方が1年以内に治療をやめてしまうことをからめて、服用遵守に対する用語、コンプライアンスからアドヒアランスへの概念の変化についてもお話いただきました。ワーファリンをやめてしまう患者は、若く、CHADS2スコアが低いかたで(病気の自覚が足りない人なのかな^^;)INRのコントロールも不良でコンプライアンスが低いとのことです。コンプライアンスとは医療では上から目線の行為ですが、ならばコンプライアンスが悪くても、患者主体の概念を持つアドヒアランスはどうなのか?とうことでした。

そしてワーファリンと作用が同等以上で副作用が少ないと検証されたNOACにアドヒラランスが向上することが期待されたのです・・・・

しかし結局の話、ワーファリンと比べてNOACsはアドヒアランスの向上に寄与しなかったそうです。志賀先生の病院ではNOACsを服用した患者の方が皮下出血や胃腸障害(むかつきなど)を起こすことが多く、本来服用中止になり得ない事象が理由で患者は治療をやめてしまうのだそうです(なぜ有害事象がワーファリンに比べてNOACsの方が気になる結果に至るのかはよく理解できませんでしたが、服用当初の服薬指導というか、変な言い方だけれど治療開始時の気軽さみたいなものが関係あるのかもしれないとは思いました。薬剤師が果たす役割が大きいのではないでしょうか)。途中で服用をやめてしまうと、服用を継続しているよりも6〜25倍も血管イベントが増えるそうですので大問題です、これはワーファリンでもNOACsでも同じリスクです。

抗凝固療法をやめてしまった人の8割は「自分は脳梗塞は起こさない」と思っているそうです。そして同じく5割の人は薬に対する不満(飲みにくい、副作用がある)を持っているそうです。患者の立場に立ってみると、どんな薬が良いか。1日1回服用が良い、副作用が少ない(胃のむかつきが起きない)などが求められるとのことです。

元々ワルファリンカリウムの大出血のリスクを回避できるNOACsだったはずですが、抗血小板剤の併用時には大きな出血のリスクもあるそうです。相互作用がある薬剤の併用があったとしても作用の評価ができるワーファリンの方が信頼して投与できる場面もあるとのことです。臨床のリアルワールドでは杓子定規なガイドラインは通用しない、患者個別に治療、投薬の選択をしていかなければならないということでした。患者の年齢、高齢患者の性別、脳卒中の既往、腎障害、抗血小板剤の併用、相互作用、ワーファリンとPTINR、大出血のリスク、薬物動態から考えられる問題(バイオアベイラビリティ、腎排泄率、代謝など)、そして患者さんの気持ち。

今講演の結論にもなっていますが、患者さん一人一人にとってBestな薬剤が選択されるためにアドヒアランスの問題を解決しなくてはなりません。それは薬剤師が役割を果たすときだとも思います。